* かめへんよ かめへん かめへん
学生時代に住んでいたボロアパート「なつみ荘」。
畑の広がる坂道にあり、
すぐ裏には竹ヤブがあり、風が吹くと竹がザワザワ鳴った。

風呂なし六畳一間 築30〜40年(多分)。
授業にも出ず、風呂も無いから風呂のある友人宅に入り浸ったり、
アルバイトばかりでほとんど帰らないから
正直 雨風がしのげればどこでも良かった。

家賃は2万4千円(水道費込)。
壁も薄く少し大きな音で音楽を聴こうものなら
2階からドンドン!(うっせーぞ)の合図のジダンダが聞こえた。

隣のオトコが彼女を連れて来ようものなら
男女の会話が筒抜けなので、お互い”そういう雰囲気”になった瞬間に
そそくさと部屋を後にする「暗黙の了解」があった。

当時は家賃の振込みは「手渡し」だった。
大家さんのおじいさんが月末になると
どこからともなくやってきて
薄っぺらいドアを「コンコン」とノックをした。

月末の金銭のやりくりにいつも困窮していたボクは
息を殺して「居留守」を使った。

大家のおじいさんは
もう一度だけ「コンコン」とノックをしてしばらく待つと
あきらめたのか
ゆっくりと隣の部屋のドアへ向かう足音を残して静かに去っていった。

なにしろ壁が薄いから
3〜4軒隣に同じように「コンコン」とノックをして回る音が聞こえた。

しかし誰とも応対した様子は無かった。

ある時いつも通り
月末のやりくりに困窮していた矢先、
玄関先でバッタリ大家のおじいさんに出くわしたことがあった。

歳の頃、70歳中盤〜くらいか、痩せた体に白いよれたワイシャツ、
グレーのズボンにはげた白髪頭。
農家さんらしい井出たちで黒い長靴を履いていた。

おじいさんは驚いて固まってオビエているボクに小さな声で

「あのう、お家賃ですが・・・いかかですか?」

「は、はひっ! ら らいげてうにおし おしはらいしまっ ふけど
だいっじょうぶで ふか はひふへほ」


するとおじいさんはにこりとして

「か! か かめへんよ。かめへんかめへん!」

と ひきつった精一杯の笑顔で答えてくれた。

「あははははは」

「あははははは」

と二人とも引きつりつつその場を後にした。

次の月末。

太ったおばちゃんが少し強い口調で「ごめんくださいな!」とやってきた。
その月はたくさん入ったシフトのおかげで珍しく潤っていた。
そのおばちゃんに家賃2か月分を支払った。
太ったおばちゃんは隣のオトコからも家賃をもらえたらしく上機嫌で帰っていった。

しかしあれ以来、
大家のおじいさんのやさしい「コンコン」というノックがなることは無かった。

月日がたち
そんなボクにも家族ができた。
旅行で近くまで行った時 ちょっとだけ寄り道して
実に何十年かぶりに「なつみ荘」があった場所へ行ってみた。

そこは新興住宅地になっていて
向かいにあった畑も裏の竹林も造成されて
全く違う景色になっていた。

分譲中のお洒落なモデルハウスの庭に
風船を持った子供が遊んでいた。
 
2014.02.05 Wednesday * 16:35 | 生活 | comments(2) | trackbacks(0)
Comment
いい・・・、とてもいいですよ!新商品アップもよろしくね。
| joboxer | 2014/02/05 9:41 PM |
ありがとうございます!ぶラジャー!
| オネショ | 2014/02/05 11:18 PM |









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